ジークの雑録日誌

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ー動学的一般均衡モデル概説ー

  今回は経済政策の分析ツールとして一般的になった「動学的一般均衡モデル」について説明をする。

  学部レベルのマクロ経済学を学んだ人が上級マクロを学ぶときに混乱するのが、「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」である。マクロ経済学ミクロ経済学で仮定される、効用を最大化しようとする家計と利潤を最大化しようとする企業をモデルに組み込もうとする動きである。(合理的経済人{主体}の仮定をマクロ経済分析の基礎におく動き)

  マクロ経済学では長期、中期、短期という時間的区分で分析を行っている。マクロ経済学の主な学派はケインジアン新古典派である。(※1)

 (※1)ケインジアン新古典派:ケインイジアンは市場における価格、賃金などが硬直的であると仮定し、新古典派は価格、賃金などが伸縮的であると仮定した。

 ケインズは一般理論を出版し、マクロ経済学(ケインズ理論)を創始した。それは、「ケインズ革命」をもたらす。ケインズは不況下において、政府が需要を作り出すことが肝要だと主張した。短期において、その主張は正しく一定の効果を発揮した。またケインズ理論を支持する学者たち(ケインズサーカス=オールドケインジアン)は、理論のモデル化に苦心した。それはケインズサーカスの一員であるヒックスによって「IS-LM分析」という形で結実するが、このモデルは静学的(時間の経過を考慮しない)であったため厳しい批判に晒されることとなる。ケインズが提唱した「有効需要の原理」の解釈について誤った考え方が蔓延ってしまう。ケインズ財政出動を「景気回復の呼水」と考えたが、ケインズサーカスでは、「景気回復の万能薬」になると考えた者も多かったようだ。70年代のスタグフレーションに対し、有効な政策を打ち出せなかったことによりオールドケインジアンは衰退していくこととなる。ただし、新古典派おいても短期的では財政出動が有効であるという意見もある。

  この一連の経緯によって、「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」という潮流が生まれた。ミクロ経済学の市場観はワルラス一般均衡理論に依拠している。多数の財が常に市場均衡価格で取引され、適切な資源配分がなされる」という理論である。ただし、ワルラス一般均衡理論は静学モデルなので、「動学化(時間の経過を考慮するモデル化)」する必要がある。それが、動学的一般均衡モデルである。このモデルは前述のミクロ的基礎付けがなされている。

  これに対抗し、ケインズ理論にミクロ的基礎付けをもたせようとする動きが活発になる。それが、「ニューケインジアン学派」である。多くのニューケインジアンの学者によって、ケインズ理論にミクロ的基礎付けがもたらされることになった。(※2)これで新古典派と同じ土俵での議論が可能になった。これにより長期の政策シミュレーションが可能となった。

 (※2)ニューケインイジアン学派の功績:ケインジアンが主張する「価格の硬直性」をミクロ的基礎に基づいて証明し、裁量的な経済政策の有効性を示した。

  イデオロギーや主観的基準を排した政策シミュレーションが可能となった。動学的一般均衡モデルにおける最大の功績は、新古典派との「前提条件の相違」を限りなく少なくし、分析ツールの統一化を行ったことだと考える。