ジークの雑録日誌

ゲームや小説 アニメの評論など

MTPL論文(木村 優氏)第3稿を読んで

今回はMTPL論文(木村 優氏)第3稿の批評を行う。

 まず、論文の概要は「租税貨幣論と内生的貨幣供給論に着目して MMT の論旨を数理モデル化し,物価水準の変動のメカニズムを明示化したマクロ経済モデルを提案する」というものである。RBCモデルを基礎とする点は第1稿と変わらない。第1稿からの変更点は以下の通りである。

 ①貨幣論に関しての学説変遷史の追加、②定義式及び数理モデルの追加と厳密化の2項目である。前提条件として名目賃金の粘着性(NK学派的仮定)をとりいれたことで第1稿よりも現実的なモデルになっている。粘着性を導入したことでNK学派にも受け入れられやすくなったと考える。

 第3稿では中央銀行の政策ルール、SFCモデルに基づいて租税債権、中央銀行券、国債の定義式あるいは公式を導出し、ミクロ的基礎づけを与えることに成功している。

 ここまでMMTのを論旨をDSGEモデルに組み込んだ論文は氏の他にいない。新規性は極めて高い。

 MMTerは裁量的財政政策の復権だと曲解するかもしれないが、それはMTPLを理解できていない証拠だ。というより静学モデルで理解が止まっているのである。

その意味で日本の政治家や官僚にこのモデルを理解できる人は少ないのではないだろうか。少なくとも 今の財務事務次官や主計局長は動学モデルについてきちんと学んでない。若手政治家の皆さんや若手官僚にこそ読んでほしい論文である。

非常に個人的な感想になってしまうが本モデルを完全に理解したとき、私は氏の才能に敬意と嫉妬という相反する感情が湧き起こった。嫉妬の大半は自らの数学コンプに起因しているので無視してもらって構わない。

 

個人的な要望になりますが査読付き雑誌に掲載されたあと、Rに実装できるようコードを書いてもいいですか。