ジークの雑録日誌

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奈須きのこ・TYPE-MOON私論―同人からの飛躍―

 奈須きのこは、TYPE-MOONに所属するシナリオライター・小説家であり、TYPE-MOON(通称、型月)を支える概念武装である。今回は型月を支える概念武装である彼について記事を書こうと思う。

 奈須氏は同人ゲーム『月姫』の脚本で同人デビューを果たす。奈須氏のシナリオの特徴として特筆すべきことは舞台、世界設定の緻密さと作品ごとの関連付けの上手さである。月姫が大ヒットしたことで同人界における型月の知名度は飛躍的に向上する。当時、同人サークルだった型月の創設メンバーの1人だ。

 奈須氏の作品と言えば魔術、魔法の類が頻繁に登場しファンを熱狂させている。「魔術、魔法なんてマジ中二じゃんwwwwwwww」などと叩くアンチもいるが、一方でこれほど膨大な設定を扱う奈須氏の力量に脱帽もしているのだ。作品世界における魔術、魔法はしっかり体系づけられていて、その1つ1つを解釈するだけでも非常に奥深くまた面白い。作中設定のルーツを辿ると中世ヨーロッパや古代エジプト、大陸魔術などに行き着く。世界設定の緻密さと作品ごとの関連付けの上手さは『魔法使いの夜』と『空の境界』が良い例だろう。蒼崎橙子蒼崎青子が姉妹といった設定などである。そもそも『Fateシリーズ』や『月姫』、『魔法使いの夜』と『空の境界』は世界設定を共有している。時系列と物語の舞台が異なっているだけである。

 型月成功のもう1人の立役者といえば武内崇だろう。彼は型月代表、イラストレーターであり型月を所有する有限会社ノーツ代表取締役だ。奈須氏の中学時代からの友人で氏の才能を見い出した人物でもある。型月は月姫発売後の次回作(Fate/stay night)を同人で出すか商業で出すかとういことに悩んでいた。商業で出すとなれば同人時代よりも流通経路を多く確保する必要がある。そのため信用力と信頼性の確保が急務であった。そこで考え出されたのは型月の法人化である。型月が商業デビューした当時は最低資本金制度があり法人化するためのハードルが高かった。信用力の確保と最低資本金を最小限に済ませる目的で型月の法人化には有限会社の形態をとった。

 この判断は極めて正しい判断だったと言える。なぜなら当時は株式会社を除く他の会社形態だと債務に対して無限責任を負ううえ、信用力が低く株式会社だと最低資本金が高額となるからだ。よってその中間である有限会社の形態をとることが最も望ましい。このように武内氏のサポートがあったからこそ型月の商業デビューはスムーズだったといえるだろう。

 最後は奈須氏の座右の銘で締めようと思う。

                「人類皆強大」by 奈須きのこ