ジークの雑録日誌

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小説(挿絵なしの大衆文芸)とライトノベル(挿絵ありの青少年向け小説)の相違点に関する考察

私は小説が好きだ。ラノベも好きだ。この2つ主な相違点は読者層の違いと挿絵の有無だと考えている。細かく言えば文体、文章表現の違いが挙げられる。今は文庫レーベルが豊富にあり小説とラノベの境界線がはっきり分かれていることが多い。

 ラノベは小説に劣りオタクが読む小説というのが世間の一般的な評価である。小説とラノベに共通することは『売れるものを書かなければならない』ということだ。しかもラノベのほうがより強くそれを求められる。なぜか小説よりも読者層が狭いため(需要がニッチ)だ。ラノベ作家のなかには「売れるものじゃなきゃ誰も得しない」という編集者の言葉にキレてしまう新人作家もいるらしい。作家は書きたいものを書くという信念があるため編集者と衝突することが多々あるのは仕方ない。しかし新人作家がすべき振る舞いではない。別に印税(作家の収入)がいらないなら商業出版をすべきではないし同人でやれば十分だ。ラノベというニッチな分野ならなおさらだ。

 ベテラン作家も書きたいものを書くということができずに苦悩した人もいる。シャーロックホームズシリーズで有名なアーサー・コナン・ドイルだ。彼はもともと歴史小説作家であった。歴史小説作家としては既に中堅の位置を占めていた。ドイルの編集者は自社の大衆文芸誌の売上を伸ばすためドイルに推理小説の執筆を依頼した。今でこそ推理物は人気のジャンルになっているが、当時の英国ではマニアックなジャンルの1つだった。まさに今日のラノベと同じ扱いを受けていたのだ。歴史小説で中堅作家の地位にあったドイルにとって担当編集者からのこの依頼が屈辱的な話だったことは想像に難くない。しかし推理物を書かなければ今後歴史物は一切掲載しないという脅しもあってドイルは渋々推理物の執筆を了承した。こうして名探偵ホームズが誕生したのである。皮肉にもドイルが熱意を込めて作った歴史小説よりも50倍近く売れたため(単行本売上比)ホームズの続編を書かなければならなかった。さらにホームズシリーズの印税だけで十分な収入を得ることができ本業の眼科医を辞め専業作家になれたのである。

 彼は英国推理物ブームの火付け役、ホームズの生みの親として歴史に名を残すことになる。要するに自分の書きたいものが書けないからと言って腐る必要は全くない。